「はい まちかど探偵事務所でございます。」
耳に届いた声に探偵長は戸惑いを覚えた。
・・・誰だ?・・・・
横にいる人物に視線を向ければ高峰悦子が爽やかに微笑んでいる。
ここは一条通の一角・・・電話をかけた先は自分の事務所の筈。
・・・ん・・誰だ?・・・思わず声に出していた。
「さぁ?誰でしょう。」幾分声に笑いが含まれたように感じる。
声に幾分幼さが感じられる。
自分の事務所にそんな人物がいるわけも無い。
「ご用件は?」先程よりは少し大人びた声に笑いがさらに多く含まれる。
「もしかして・・・。」
「はい。もしかしなくても今の時間この事務所には私しかおりません。」
それはいつも聞いているペンギンの声。
「おい!助手の身でからかうなよ。」
探偵長は苦笑をしながら言葉を繋いだ。

そんな事がありまして・・・
一行は待ち合わせをして大将軍商店街にやって来たのです。
「平安京のことは知っているよね。」
「はい。一応は図書館で学んできました。」
「この一条通は外と内の境界だったって事は?」
「詳しくは存じませんが一応のところは読んできました。」
ペンギンなかなかの勉強家なのか?
「百鬼夜行の通り道だったと言う言い伝えからこの商店街では妖怪を売り物にしている。」
探偵長の説明を聞きながらぶらぶらと商店街を歩くご一行様。
「あっ見てください。しずかちゃんです。」
高嶺悦子が嬉しそうに声を上げる。
視線の先には着物やさんの店先に振袖姿の猫の置物・・・
「猫叉はメスなのですか?ずっとオスだと思っていました。」
ペンギンが感慨深そうに言う。
「いや・・・特に決められてはいないと思うが・・・」探偵長は少々困惑気味。
「決まっていないのですか?」 「まぁ妖怪だから・・」

「きゃぁ!!今度はコッコちゃんがぁ。」高嶺悦子は興奮して叫んだ。
「コッコって・・・ニワトリがどうしました?」探偵長が戸惑いを隠せないままに見た先には「洋品店」
店先に置いてあるのは狐であった。名前は「狐子」
「ははぁ。」っとペンギンが納得している。
「納得できるのか?」探偵長は小首をかしげる。
「洋服を着て人間を化かすのですね。」迷いも無くペンギンが言う。
・・・そうなのか?・・・・・盛り上がれないのは探偵長一人だけのようです。
一軒の薬屋さんの前になぜか龍の置物が置かれていた。
「これは可愛くないわねぇ。」
高嶺悦子は龍はお気に召さないようだ。
「龍は水の気ですから熱を下げるって事なのでしょうか。」
ペンギンは至極まじめな表情で探偵長に問いかけた。
「さぁ・・・」
こんな心算でこの商店街にやって来た訳ではない探偵長
コメントのしようも無くひたすら受け流すしかありません。

「これこれ!!」っとまたまた嬉しそうな声が響く。
「探偵長これが有名な妖怪コロッケですよね。」
高嶺悦子が手にしていたのは真っ黒なコロッケでした。
「ひぇ~~!!黒い食べ物ですか。」ペンギンの声がひっくり返る。
「このような色のものを京都の方は好むのですかぁ。勉強不足で・・・。」
ペンギンの声を聞き流す探偵長。
気が付けば嬉しそうに真っ黒なコロッケを頬張る高嶺悦子はご満悦。
それを見上げるペンギンは何やら必死でメモを取っている・・・

常識と斬新と非日常・・・
ここはすべての境界線。



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