・・・・やっと 助手を持てるまでになったんや
探偵長は部屋の中を見回して小さく呟いた

・・・・・・思えば 長い年月やった

学生時代に アルバイトで始めた「便利屋・なんでもかんでも」
全ては これが 始まりだった
まだ社会の仕組みをそれ程詳しく理解していたわけではない・・・と思う。
それでもこの時の経験がやっと生かされるときが来た・・・っと少々感慨深げな探偵長である。

それにしても・・・最初の応募者がペンギンって・・
いくら京都でもこれは無いだろう
「ご心配には及びません。私ペンギンでは有りません。」
じゃぁ何なんだよ~~~
「はい M87星雲からきました。出来れば住む所をお願いできればありがたいのですが。」
「うっ宇宙人!?」  
探偵長の目が大きく見開いた。

事務所の責任者である探偵長さすがに心穏やかなる物があるのだがここで顔に出すようでは商売にはなりません。
「珈琲でもいかがですか?」とさりげなくソファに誘う。
「いただきます。」っとペンギンが笑顔を返す。
もっとも・・ペンギンが笑うものなのかっと言う疑問はここでは追及しない事に・・・
珈琲をいれたカップを持って戻ってきた探偵長はペンギンが腰掛けずに立って居るのを見て「ハハ~ン」っと納得。
つまり・・足が短くて一人では腰掛けられないということだ。
「ちょっと。」声を掛けてペンギンを持ち上げるとソファの上にそっとおろす。
「すみませんねぇ。地球の家具はまだ慣れません。」
「いやいや お気になさいませんように。」
探偵長もにっこり笑う。
「でも・・地球の事は星の図書館でしっかり学んできましたから大丈夫だと思います。」
「ほぅ~あなたの住んでいる星の図書館には地球についての書物がある?」
これは知らなかったと思う探偵長
それは当たり前やなぁ。そもそもM87星なんて今日まで知らなかった。
M78星雲なら知っている・・・
「あぁそれはウルトラマンが住んでいます。一応ご近所付き合いはしておりますよ。」
珈琲を啜りながらペンギンが言う
「これはいい香りですね。モカが入ってるのかな。」
どうやら地球の味覚も学んできたらしい・・

「それでは私もよく考えてご連絡するようにします。」
探偵長は穏やかな笑みを浮かべながらペンギンに言った。
「良いお返事がいただけるとありがたいのですが・・・。」
「それで今はどちらにいらっしゃる?」
・・・たしか住む所が決っていないような事を言っていたが・・・
「あそこです。仮住まいですが。」
ペンギンが指をさしたのは窓から先だけが見えている京都タワー。
「ホテル住まいですか。」
「いいえ あの一番上・・・。」
探偵長が目を凝らしてみればタワーの一番上にある筈のない物がちょこんっと乗っているような。
・・もう訳わからん・・・
「それでは良いお返事をお待ちします。ご連絡は携帯にって地球では言うようですが・・ご足労でもタワーまでおいで願えればありがたいです。」
ペンギンは大仰に頭を下げると探偵長の見送りを受けながらドアの外へと姿を消した。

「はぁ~~~」
京都という街はほんまに奥が深い・・・探偵長 朝からお疲れモードになってしまった。
「とにかく求人広告をビルの入り口に貼ってからまだ数時間。
今日一日くらい待ったって良いよなぁっ」と思う。
いくらなんでもペンギンはなぁ・・おっとペンギンじゃなくて宇宙人だったな。
一人でぶつぶつと言いながら読みかけていた英字新聞に目を落とす。

それから・・それから・・・西の空に夕焼けが鮮やかに浮かび やがて満天の星空になってもドアをノックする者は誰もいなかった。
「結構面白い仕事だと思うんだけどなぁ。」
首をかしげた探偵長
ハッと気がつく。
朝来たあのペンギン・・貼ったばかりの求人広告を持って入ってきたよな。
慌ててポケットに手を入れて確認する。
ポケットの中には皺くちゃになった広告が・・・
「あいつめ~~~。」

ペンギンはこうして無事に探偵事務所に滑り込むことに成功したのでありました。
この先この探偵事務所はどのようになって行くのでございましょう。
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