夏が終わろうとしてた。
陽射しはまだきつく感じるが吹き渡る風は微かに秋の気配を含んでいる。
・・・もうすぐ閉鎖されるから・・・・
探偵長の言葉に誘われてペンギンと探偵長は比叡山へ向かった。

出町柳から京福電車で八瀬・・・
鬼の子孫がいると言う。
ケーブルに乗って頂上に上がるといくらか気温が低いように感じられた。
四明岳にある遊園地の中・・・「将門岩」までやって来た。
この遊園地が冬季は閉鎖されてしまうので夏の間に・・と言う事のようだった。

「まるで・・・・」 ペンギンが口を開いた。
ん?っと探偵長の視線がペンギンに向けられた。
「純友と将門みたいですね。」 
「面白い事を言うね。」
眼下には京都の町並みが一望できる。
「あの二人もこうやって平安京を眺めたのでしょうか。」
「それは伝説だよ。 二人が一緒にいたと言う記録は無い。」
「あの二人は本当に平安京を壊したかったのでしょうか。」
「いいや・・少なくとも私はそのようには考えていないよ。」
「都に住んでいた人たちの恐怖が生んだ伝説なのかも知れませんね。」
「あぁ・・そうかも知れないね。」
取り留めのないことを話す二人の頭上を真っ白な雲が渡って行く。

「・・・で?」 探偵長の視線がペンギンに向けられた。
「やっぱり行くのかい?」
「はい 一度戻る事にします。」
「そうか・・寂しくなるね。」
探偵長の言葉にグシッと目を擦ったペンギンは大きく息を吐いた。
「さよならは言いません。」
「私もだ・・また戻ってくればいい。」
「色々とお世話になりました。 これで星の資料室も充実します。」
「それは何よりだ。」

「またね・・」 ペンギンはひらひらと手を振って探偵長の元から立ち去った。


明るい陽射しが差し込む探偵事務所
独り留守番を任されて所在無げに珈琲カップを洗い終わった高峰悦子。
窓際に寄りかかって空を見上げていた。
・・・ふふっ・・ペンギンさんはこの星に宇宙から来ていたのは自分だけだと本当に思っていたのかしら・・

誰に言うでもなく一人つぶやくと踵を返してドアへと向かった。
「またね・・」 ふわっと長い髪が揺れてドアが閉じられる。
事務所の中にその声だけが残った。


「やれやれ・・・」
すっかり暗くなった事務所の中。
「まったくこんな展開になるとは思わなかった。」 探偵長は頸を振った。
「よりにもよって・・・この一角に集まってしまうとは・・・・」
探偵長の口元に苦笑いが浮かんだ。
「さてっと・・仕切りなおしだな。」

あれだけ気が合ったんだ。 今度は心置きなく共同作業が出来るだろう・・・・

「またな。」 探偵長はドアを開くとこの部屋を後にした。

京都の街は中心から一歩裏に入っただけで信じられないくらいの静寂に包まれる。
ちょっと洒落たビルの壁に貼られた広告。
「空き室 あります。」

「またね。」 
   
   「えぇ またね。」

     「またな。 きっと会えるさ。」


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