「あ~ぁあ!!麩嘉の麩まんじゅうが食べたいなぁ」
唐突に高峰悦子が言った。
「また随分と突然の話だねぇ。」
探偵長が呆れたようにパソコンから視線を外して言った。
「あのお店は京都の名水を使っているのですよね。」
ペンギンが話題に入ってきた。

穏やかな秋の初め・・・
久々に気持ちの良い風が吹いている。

「京都は名水と呼ばれる地下水に恵まれているところだからね。」
探偵長が二人を見ながら言った。

・・・御所の東に染井がある。
梨木神社の境内に有って今でも汲みに来る人がいるくらい美味しいと京都の人は言う。
この染井の少し西側に染殿の井がある。・・・・・・

「この二つの井は同じ水脈なんだろうね。」
探偵長が市内の地図を広げて指し示す。
「こうやって全体を見ながらだと良く解ります。」 ペンギンが短い首を精一杯伸ばして覗き込んだ。
「一番有名なのはやっぱり清水寺の音羽の滝じゃないかしら?」
高峰悦子が指で位置を示しながら言った。
「あぁ ここは観光客も多いしね。」
「飲むと頭が良くなるとか・・・違いましたか?」
「それはどうかなぁ。」
ペンギンの質問に探偵長が笑いながら答えた。
「あらぁ?私は恋愛成就って聞いたけど・・・」
「それは地主神社の事ではないかな。」
探偵長にも音羽の滝の効能は解らない様だ。
まぁ都市伝説のように色々な人が言った事が流布して行ったのではないだろうか。
「そう言えば・・・」 っとペンギンがツツッと地図の上で指を滑らせた。
「府庁の近くに滋野井がありますよね。」
「あぁ そうだね。」

「京都はたくさんの名水に恵まれていたから美味しい物が出来たって事なんだと思う。
湯豆腐に使う豆腐だって伏見の酒だってこの水が無かったら生まれてこなかっただろうね。」
探偵長が指を折って数えているようである。

「今は涸れちゃった所もたくさんあるのですよね。少し残念な気もします。」
ペンギンが地図の上に視線を落としながら言った。
「そうだね。
地下水の流れを切ってしまえば復活はなかなか難しいと思うよ。
便利と引き換えに無くした物も多いね。」

京都の町は他の県の都市より保存基準は厳しい・・・それでも目に見えないところでこうやって消えて行ってしまう物もあるんだなぁっとペンギンは思った。
「これはメモメモ・・」っとペンギン。
「おいおい そんな事まで記録するのかい?」
あんまり自慢できることではないっと探偵長は考えているようだ。

「だけど・・・一度涸れた井を復活させてその地下水を使っているところもありますよね。」っとペンギン。
「あぁ!!そうそう そう言う事はメモって置いてくれないか。」
探偵長が嬉しそうに言った。

・・・地下水も大事。美味しいお水も大事・・だけど私が食べたいのは麩嘉の麩まんじゅう・・・こっちは忘れられちゃったのかしら・・・

高峰悦子・・外見に似合わず食欲旺盛のようである。
そんな秋本番を迎えるのはもう少し先のこと。



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