「ふむ・・とても解りやすくて良く纏まっていると思いますよ。」
机の上に広げられた地図やノートを見ながら満足そうに探偵長が頷きました。
「ありがとうございます。」
誉められた筈なのに何故かペンギンの表情は冴えません。

そもそもの始まりは探偵長の海外出張です。
今 世界は日本ブームで在り来りの情報では満足しない人たちが増えています。
そこで探偵長には海外からもオファが来るのでした。
打ち合わせの為二週間ほど探偵長は渡米する事となったのです。
同行するのは秘書の高峰女史・・・
「なんで私ではないのです?」ペンギンは不満タラタラ言ったものですが「ペンギンが飛行機に乗るって有り得ないっと一言の元に却下されたのでした。
この二週間の間に与えられた課題が鎌倉だったと言うわけです。

「切り通しは鎌倉の特徴だしね。」探偵長はレポートを見ながら言います。
「はい。」
「特に極楽寺坂の地形が今とはこんなに違っていると言うのは仕方の無い事なのかも知れないですね。当時はこんなにすごい急坂だったんだねぇ。」
探偵長は感慨深げに視線を遠くへ飛ばしました。
もしかしたら鎌倉へ出かけて見たいと思ったのかも・・・

「ところで・・・・こんな優秀なレポートを作っておいて何故にそんな不機嫌そうな顔をしているのですか?」
探偵長がペンギンを見下ろして言いました。
「実は・・・」ビクッと一つ身震いをしてペンギンはボソボソと話し出しました。
「ちょっと間違えたのです。」
「何を?」
「設定をです。気が付いたらとんでもない所に出てしまいまして・・・」
ペンギンが話す事には・・
ハッと気が付いたとき海の上にいたと言うのです。
どうやら夜のようであたりは暗く浜に打ち寄せる波の音が聞こえているだけ。
その浜辺に一人の僧が座り周りに何人かの武士が立っていました。
そのうちの一人の手に太刀があって今にも僧の首を切ろうとしているのを確認した時に間違った事を理解したのです。
もっと昔に行かなければ成らなかったのに何処で間違えたのか・・っとペンギンは慌ててその場を立ち去ろうとしました。
「発進!。」
ペンギンの乗り物はスピードを上げてその場から消え去った・・・と言う事を行きつ戻りつしながら探偵長に説明しました。

「ちょっと待ってください。」
探偵長は額に手を当てて言いました。
「すると・・・歴史書に載っているこの部分は・・・。」
探偵長が開いたのは「鎌倉時代の僧 日蓮が首を切られそうになったと言うあの場面。
「私のせいです。」

「たつみの方向よりおおいなるひかり物現れて満月の如く辺りを照らす。真昼の如くなり」
この事によって日蓮は首を切られずに済んだと言われている。

「あなたは・・・どうやって鎌倉へ出かけたのですか?」っと探偵長
「へっ?時空飛行機ですが・・それが何か?」
・・・・あ~~ったく!! 探偵長は眩暈を覚えた。

「探偵長 あなたは仰いましたよね。ペンギンは飛行機に乗ることが出来ないから留守番にするって。」
~確かにそう言った記憶はある~
「それでしたら新幹線に乗って行く訳にも行かないと思いまして・・自分の乗り物で出かけました。」
シャラッとペンギンは言う。
・・・確かに 確かに・・・
新幹線の座席にペンギンが座っている様を想像してブルッと身を震わせる探偵長でありました。



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